座喜味グスクの穴
前回は護佐丸と座喜味グスクについて書いたので、関連して座喜味グスクの「穴」について紹介しましょう。
座喜味グスク、最近はイベントのためか城郭外部の周辺がキレイに草刈りされていました。僕をふくめて座喜味グスクを訪れる観光客は内部は見学しますが、城壁外をじっくり見て回ることはまずありません。そこで良い機会なので座喜味グスクの外を一周してみました。
すると…一の郭の北側城壁の根本に、何やらおかしなものがあるじゃないですか。「穴」です。
よく見ると、穴の下部は平らな石灰岩を敷いていて、これは排水口だと考えられます。座喜味グスクは1970~80年代に修復工事が行われていて、全ての石積みが護佐丸の時代のものではありません。しかし、この「穴」部分の石積みを見ると明らかに修復されたものではなく当時のもので、復元工事の際に追加した可能性は低いかと思います(なお、この穴の隣にもう一つ同じような穴があり、石垣は修復したもののようです)。
内部をのぞいてみると、底にはしっかりと石が敷かれ、かなり奥まで続いています。底は傾斜がついていて、やはり排水のための設備のようです。座喜味グスクの報告書を見ると一の郭で3ヵ所の排水口が見つかったとありますが、いずれも城壁内側のもので(現在は東側に一つ確認できます)、あるいは内部の穴がこちらに連結しているのかもしれません。
ここで思い出すのが、中城グスク北の郭外側で見つかった排水施設です。グスクが排水機能なども考えて築かれていたわけですが、中城グスクへの引っ越し以前にも、護佐丸はすでにこのような設備を備えたグスクを作っていたことがわかります。
参考文献:『国指定史跡 座喜味城跡環境整備報告書(Ⅱ)』
【追記】座喜味グスクの穴の方角をはかったところ、見事に南北方向に一致し、また一の郭内部の穴は東西方向にほぼ一致していました。ここの穴は排水を目的としたものですが、わざわざ東西南北に一致させるというのは、何か宗教的な意味も併せ持っているのでしょうか。
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コメント
位置的に見ても排水施設なんでしょうね。
大雨になるとグスク内も水浸しになるでしょうし。。。
ところで、安慶名グスクの例の穴なんですけど、先月に見に行った際には、風の音がしてましたよ。
これ、風向きによって音質に違いがあって、やはり宗教的に造られたものではないでしょうか?
口笛を吹くと、風がやってきて涼しい気分になりますし、そのうちに雲が湧いて雨が降りますね(自然現象としては逆なんですが)、真夏のサトウキビ畑での作業では、祖父がよく口笛を鳴らして風を呼び込んでました。
余談ですが。。。弥生時代の "見る銅鐸" に残された4つの穴も雨乞いの際にヒューヒューと音を奏でていたんじゃないかと想像しています。
投稿: 琉球松 | 2014年11月 2日 (日) 10:49
>琉球松さん
「音」を出すための機能、という発想は僕にはありませんでした。検討の余地はあるかもしれませんね。
『おもろさうし』などで「音」に関する記述などを調べていくと解明のヒントになるかもしれません。
投稿: とらひこ | 2014年11月 2日 (日) 15:47
『おもろさうし』には風に関する歌は見当たらないようです。
そうであれば、そのもと歌となったとされる奄美&沖縄の「神歌」群を調べる必要があるかもしれません。(『南島歌謡大成/外間守善 他』などに集録)
ただ、これら王朝成立以前のものと考えられる歌と "大型グスク" の関連性は薄いようで、なんとも歯がゆいところです。
さらに可能性があるとすれば、朝露の採取装置というのはどうでしょうか。
以前、早朝の玉城グスクの城門上部から大量の雫を目撃したことがあります。これは顔を洗えるほどの大量?な水で、「孵水・若水」って感じでした。
ただ、『おもろさうし』に歌われる「孵水・若水」は明らかに泉や川からの採取で朝露とは関係なさそうで残念です。
しかし、セーファー御嶽では鍾乳石の先端から落ちる雫を聖水としていますね。
投稿: 琉球松 | 2014年11月 5日 (水) 14:53
>琉球松さん
返事遅れましたが…風に関するオモロはありませんでしたか。朝露の採取装置というのも面白いアイディアですね。斎場御嶽の例から考えても、考えられる話かもしれませんね。
投稿: とらひこ | 2014年11月25日 (火) 19:33