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2011年7月20日 (水)

【ネタバレ】テンペスト解説(2)

さてドラマ第1回で登場した各シーンの「なんだこれ?」をいくつか解説していきます。ストーリーとはあまり関係のない超マニアックな解説ですが、【ネタバレあり】なので、まだ観てない方は注意です。

疑問1:聞得大君が御殿で祈っていた阿修羅のような神様は何?

あれは弁財天です。つまり七福神の一人の女性の神、弁天さまですね。弁財天は聞得大君の祭神で、御殿の祭壇には弁財天の掛け軸が祭ってありました。全然そう見えない!と思う方もいらっしゃると思いますが、実は琉球の弁財天は本土で一般的なおだやかな女性の姿をしていませんでした。琉球では6本の腕で、太陽と月を手に持っているという異形の神でした。これは日本本土の宇賀弁財天の系譜を引くもので、琉球の場合は荒神と習合し、悪の心を抱く者を罰するコワーイ神様でした。今回の弁財天はこの事実をもとに再現しています。高岡早紀の役にピッタリの神様かもしれませんね(笑)

詳しく知りたい方は、次の論文を読んでください。
参考文献:真喜志瑤子「史料にみる琉球の弁財天信仰」(『南島史学』42号、1993)

疑問2:門番の多嘉良や警察の平等所の役人がしていた変なタスキ掛けみたいなのは何?

あれはタスキ掛けではありません。「袖結い」という着物を活動しやすいようにした琉球独特の方法です。本来は着物の両袖を後ろに回し、後ろでその両袖を結んで、袖が腕を動かすのにジャマにならないようにします。もしくは着物の後ろに1本のヒモを通し、それを後ろ側で結ぶ方法もあります。以前放送された大河ドラマ「琉球の風」では普通に本土風のタスキ掛けでしたが、今回は本来の袖結いの採用になりました。ただ結ぶのに用意した衣装の袖の長さが足りなかったということで、「那覇綱引図」に出てくるヒモで袖を結ぶ方式を採用しています。本当はその下から上下2つのパーツに分かれる下着を付けたほうがよかったのですが、まあそれは次の課題ということで…

Photo

実際の袖結いを見たい方は、次の絵図などを参照してください。
参考文献:「冊封使行列図」(沖縄県立博物館・美術館蔵)、「那覇綱引図」(鎌倉芳太郎『沖縄文化の遺宝』岩波書店、1982)

疑問3:科試の合格発表があった会場で、合格発表をした役人の後ろにあった額は何?

あれは実際にあったもので、国学(琉球の最高学府)に掛けられていた「海邦養秀(かいほうようしゅう)」という額です。「海の邦(琉球)の優秀な人材を養成する」ぐらいの意味ですが、1801年、首里城龍潭のほとりに国学が設置された際、若き国王の尚温が自ら筆をとり書いたものです。ちなみに国学は現在の沖縄県立芸術大学の敷地にあって、今でも石垣の一部が残っています(こちら参照)。そして首里高校に再現された額があります。実は僕は首里高校出身ですが、在学中は体育館に掛けられていました。はたして今はどうなっているのでしょうか…

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コメント

琉球では弁天様が怖い女神さまだとは意外ですね。
宇賀弁才天というと、琉球の弁天様は滋賀の竹生島の弁天様や鎌倉の銭洗い弁天と同じ系統でしょうか?
沖縄でも首里の弁天堂は池の中にあるので、水の女神さまという点はヤマトも琉球も、弁天様についてインドから伝来した考えを持ち続けてるんですね。

投稿: 大ドラ | 2011年7月20日 (水) 19:51

先日は全国放送デビューおめでとうございます。
解説番組では、爽やかな語り口の好青年でしたね(w

時代劇と言うよりはファンタジー(40年前の少女漫画チック)の要素が強いと、原作を読んで正直思ったのですが、このドラマは何も考えないで素直に楽しめそうです。
GACKTのケレン味も、NHKがどこまでやってくれるか先が楽しみですよ。


ところで・・・あの掛け軸はちょっと平板な作りのように見え・・(というのが一緒に見ていた家族の一致した意見で)
王宮絵画の伝統に則した部分もあったのでしょうか?

投稿: nagamati | 2011年7月20日 (水) 19:56

>大ドラさん
竹生島や鎌倉の弁財天が宇賀弁財天の系統のようですから、琉球とも親戚?になりますね。

琉球の弁財天堂はもともと朝鮮伝来の大蔵経を収める経堂だったのですが、薩摩軍侵攻で焼けてしまい、隣の円覚寺から弁財天を持ってきて再興したのが今の姿です。ただ琉球でも弁財天は水の神であることは間違いないと思います。

>nagamatiさん
特番ご覧になりましたか。僕の出番はわずかでしたがあんまり噛まずに話せたかなと思ってます(笑)

ドラマはあくまでも琉球の歴史を題材にしたエンターテイメントですので、存分に楽しんでいただけたらと思います。

弁財天の絵のタッチですが、琉球の国王肖像画やその他のタッチを参考にして描いています。国王肖像画は立体的な質感を出すより、基本的に正面を向いて平板なのが特徴かと思います。

投稿: とらひこ | 2011年7月23日 (土) 10:41

琉球には農具や刀などの金属製品を作る技術はあったのでしょうか?

投稿: ジン | 2011年7月24日 (日) 09:10

>ジンさん
もちろんありました。その技術は鍛造・鋳造ともに日本や中国にひけをとらないレベルです。

詳しくは久保智康『日本の美術533 琉球の金工』(ぎょうせい、2010)を読んでみてください。

投稿: とらひこ | 2011年7月24日 (日) 09:48

これですか。
ttp://toraheko.ti-da.net/e2828580.html
その割には沖縄の伝統工芸で金工品はあっても鍛冶は耳にしません。沖縄戦ですべてが失われたのでしょうか?

自分は居合道をやってるので沖縄独自の製刀技術や剣術なんかを見てみたいな。

投稿: ジン | 2011年7月24日 (日) 11:29

>ジンさん
それですね。沖縄の鍛冶については朝岡康二『日本の鉄器文化』(慶友社、1993)に詳しく書かれていますよ。

投稿: とらひこ | 2011年7月27日 (水) 20:32

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