久高島民の水泳伝授
琉球王国の正史『球陽』附巻には、久高島に関する面白い記事があります。
1863年、薩摩藩の島津久光から「薩摩藩内の漁民たちに水泳術を伝授せよ」との命令が久高島民に出されたのです。そこで久高島から4人の島民が鹿児島へ派遣されました。1年後、水泳術を教えた島民は琉球へ帰り、王府から褒賞されました。
久高島はエラブウミヘビ漁で知られています。1850年代の奄美の様子を記録した『南島雑話』には、久高島民が船で奄美大島まで渡り、近海で素潜りのウミヘビ漁をしている姿が描かれています。
久高島民はさらに北の屋久島まで渡り、ウミヘビ漁だけでなく交易もしていました。その様子を知った薩摩藩は、琉球へ彼らを取り締まるように通告しています。琉球の人々は勝手に薩摩の領内へ渡ることは禁止されていたからです。
薩摩でも海を越えてやって来る久高島の漁民のことは知られていたのでしょう。水練達者な久高島の人々を知り、薩摩の殿様は水泳を教わることを思いついたのかもしれませんね。
参考文献:『球陽』、入間田宣夫・豊見山和行『日本の中世5』