夏休みと親子
冬休みや夏休みは子供にとって待ち遠しいものですが、一方で親御さんにとってはいろいろ頭を悩ます季節でもあります。およそ100年前、大正時代の沖縄の新聞「琉球新報」には、夏休みに関して親御さんにたちに注意をうながす記事が掲載されています。
◆夏季休暇(なつやすみ)における子女と家庭
~家庭教育をおろそかにせる父兄たち~▲各小学校の夏季休暇もいよいよ近づいた。この夏休みについてはお母様方のなかには、子供たちが夏休みになると朝から晩まで騒ぎまわったりして、家の中がどうもうるさくて困るとこぼす人があったり、また学校側でも休暇が続くと子供にいくぶん放縦(勝手きまま)のくせがついて困るという苦情が出たりするので、子供に夏休みをどういう風に暮らさせたらよかろうかということは、学校でも父兄でも十分注意せねばならない問題であるが、その根本の注意は常よりもいっそう規律正しくさせて子供の心身にゆるみを与えぬようにすることである。
それには図画とか作文とか手工などのような宿題を課するのも大いによいが、子供たちは休みになると自分勝手に好きな遊びばかりにふけって、これらの宿題などはうちゃっておくのが多いようだ。そして休みが終わりに近づいてからあわててやりだすという風なのが多い。
それは全く家庭の注意が足りないためで、子女の監督をおろそかにしすぎる結果である。いったい現在の本県の家庭は、子女の教育ということをほとんど無視してるようにしか我々には思えない。子供の教育というのはただ学校に任せておきさえすればよい、と思っている父兄が多いのは甚(はなは)だ憂(うれ)うべきことである。学校でいくら先生がいろいろのことを教えても、家庭で子女の行為をかえりみなかった日には何にもならない。
是非、常に学校と家庭と連絡を保ち、両々あいまって薫陶(教育)してゆかねばならないことは明らかである。その意味において、夏季休暇と本県の子供との関係はゆるがせにできないと思う。
父兄が子供の行いに注意して、よいことは誉め、悪いことは叱責してやるということがごく少ないために、自由を束縛されることを何よりもいやがる子供たちは、いつのまにかわがままで不規律で手に負えないようになってゆくのである。ことに夏休みとなれば先生とは長く離れるし、毎日これという仕事もないから、子供にとっては甚だ危険な時といわねばならない(つづく)
(「琉球新報」大正5年〔1916〕7月22日)
どうやら100年前も今も状況はあまり変わっていないようです(笑)
| 固定リンク
コメント
むしろ100年前より現状は悪くなってる気がします。 肝心の親の方がおかしくなってますからね。 学力的には、戦前のほうが東大合格率高いですよね。
学力だけじゃなく、孤児が多くて、昔の良き沖縄を引き継げ無かったせいなのか、戦後ウチナーンチュは変わってしまった、と祖父母が生前言ってたのを思い出しました。
戦後65年経っても戦争の傷跡はまだまだ大きいのかもしれません。
投稿: まりきん | 2010年12月18日 (土) 08:59
>まりきんさん
王国時代の勉強は相当熾烈なものだったようですから、その「遺産」が戦前まで残っていたかもしれませんね。
当時の新聞を見ても、同世代の今の学生では書けないような教養高い文章を書いている投書がままあります。そういう学問の気風や文化が戦争で断絶してしまった側面はあると思います。
ただまあ、全てが全てそうではなく、基本的には今も昔も同じで、適当な人は適当にやっていたのだろうと今回の記事だけではなく、他の記事も見て感じます。
投稿: とらひこ | 2010年12月18日 (土) 13:25
>まりきんさん
国費時代を抜いて戦前の方が旧帝大の合格率が高かったという論拠はどこにあるのでしょうか?そして、仰っている事例は、上位層が医学部に流れている現在と比較できるものなのでしょうか?
恵風の「昔は良かった」史観は、犯罪率の推移など様々な点で否定されていると思いますけど。
また、親や祖父母世代までは、現在とは比較にならない程の格差社会ですよね。母は友人の御殿家に行った際、同姓とはいえ、文字の読み書きがあまり出来ぬ父やシマの人々との差を痛感しております。このような状況で、PISAなどの平均学力評価を導入した場合、戦前の方が上だったと思われますか?
なるほど、上層は遡るほど教養溢れる方が散見され、尚且つ、その教養を備えた首里人・新インテリ層が無駄死にした為、教育に支障を来たしたというご指摘も首肯したくなる点はあります。洪武帝期の科挙における南北格差に類似点を見出せもしましょう。
しかし、御説の如き論調が蔓延していたのが批判されている御時勢でもありますから、今少し傍証を集めて評価なさっては頂けないでしょうか。
また、板良敷家の流転については、どうお考えか伺いたいものであります。
投稿: 御茶道 | 2010年12月18日 (土) 18:26
>御茶道さん
戦前と現在を並べてどちらかの優劣を比較するのは単純には答えは出せないでしょうね。だいたい今と昔とでは大学の位置付けも違いますし。
まあ、まりきんさんのおっしゃる戦争での断絶といった側面も全くないということもないでしょうし、祖父母さんがそういう認識でとらえていたということも、またある「事実」として捉えていく必要があるように思います。
投稿: とらひこ | 2010年12月18日 (土) 19:56