琉球国際シンポ参加記(1)
11月17日、イギリスのロンドン大学アジア・アフリカ研究所(SOAS)にて「珊瑚礁の王国-琉球諸島の考古学・文化シンポジウム」が、11月23・24日には琉球大学にて「第11回琉中歴史関係国際学術会議」が開催され、僕も報告をしました。この2つの国際学会の様子を簡単に紹介したいと思います。
ロンドンのシンポジウムはヨーロッパにおける東アジア考古学の第一人者、リチャード・ピアソン氏の提唱で開催されたもので、琉球・沖縄の考古学を中心テーマに報告が行われました。実は「琉球」をテーマにしたシンポジウムはイギリスで初めてとのこと。この史上初の試みに僕も参加できたことは光栄でした。報告の内容は突っ込んだ細かい議論というよりも、現在の沖縄考古学での主要な研究テーマ・論点を紹介する感じでした。
安里嗣淳氏は沖縄考古学の主要テーマ紹介、安里進氏が13世紀(英祖王代)浦添の琉球史上での位置づけを、亀井明徳氏が沖縄出土の中国陶磁器について、木下尚子氏が琉球諸島の貝交易と東アジア交流について、新里亮人氏が徳之島カムィヤキとその流通について、高宮広土氏が港川人など旧石器、貝塚時代人からグスク時代人への変遷について、ARNE ROKKUM氏(オスロ大教授)が八重山アカマタ・クロマタの祭礼や神女などの文化人類学的な考察をそれぞれ行いました。僕(上里隆史)の報告は文献史学から王国統一以降の都市(首里・那覇)における建築の問題を、寺院やグスクに注目するかたちで分析するという内容でした。
会場はたくさんの聴衆でした。聞くとイギリスでは「琉球」はほとんど認知すらされていないようで、そのなかで多くの参加者が集まったことは成功だったといえるのではないでしょうか。討論ではなぜか木下氏の貝交易に関する質問が集中しましたが、おそらく参加者が日本研究、とくに考古学に関心のある方々で、貝交易については弥生時代など自らがよく知る分野と密接に関わるテーマだったので質問しやすかったのではないでしょうか。
ピアソン氏は常々、琉球諸島考古学の東アジア研究における重要性を力説しておられ、今回のシンポジウムは氏の尽力で実現した画期的なものだったといえます。その内容は論文集として刊行される予定なので、さらに欧米圏で「琉球」の認知度が高まることになるでしょう。
あとシンポジウムのフィナーレは、ホールに移動してイギリスの三線隊による「安里屋ユンタ」やエイサー、カチャーシーでした(笑)ヨーロッパではマジメな学術会議をやるにしても遊び心があるというか洗練されているというか、日本の堅苦しい雰囲気とはどこか違いますね。イギリスの参加者が沖縄文化を肌で感じることができるニクイ演出だったと思います。
追記:本シンポジウムが「沖縄タイムス」2007年12月1日夕刊で取り上げられました。
記事は【こちら】
↓ランキング投票よろしくお願いします(緑のボタンをクリック)