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2006年6月 7日 (水)

泡盛だけじゃない!沖縄の酒

沖縄の酒といえば?皆さんはまず泡盛(あわもり)と答えるでしょう。もしくはオリオンビールを思い浮かべる方もいるかもしれません。もちろん正解なのですが、実は沖縄の酒はこれだけではありません。沖縄で最も古く伝統ある酒といえば…「ウンシャク酒」。何と口噛み酒!これが“本来”の沖縄の酒です。

以前、少し紹介したことがありましたが、600年前、嵐で琉球に漂着した朝鮮の人がその様子を目撃しています。その酒はにごった酒で、米を水につけてやわらかくし、女性が口で噛んでグチャグチャにしたあと吐き出して容器に入れ、それを3日ほど置くと出来上がり。唾液に含まれる酵素を利用して米を発酵させる酒で、アルコール分は低かったようです。中国の記録では、この酒は「米奇(みき)」と呼んでいたとあります。つまり、この酒は神酒(みき)なのです。味を楽しんだり、酔っ払うための酒ではなく、神にささげる儀式用の酒だったわけですね。口噛み酒はアジア各地に存在していました。

ウンシャクの語源は「歯」を意味する「うむしゆこ」からきているようで、“歯で噛んでつくる酒”ということらしいです。しかし「ミキ」と呼ばれた酒の製法には、口で噛むものではなく、炊いた米に麹(こうじ)を加えて、数ヶ月間おいてつくるものもあったようです。いわゆるドブロクのような酒だったとみられます。原料は米だけでなく、麦やイモ、粟などの雑穀も使われたようです。

では沖縄の酒の代表である「泡盛」の由来は?酒にくわしい方ならご存じかもしれませんが、泡盛はシャム(タイ)などの東南アジアからもたらされた外来の酒がもとになったと考えられています。古琉球時代には「南蛮酒」や「天竺酒」などの外来酒が輸入されたことが確認されています。この酒はいわゆる焼酎などの類の蒸留酒で、アルコール分も高いものです。また、「泡盛」という名称は江戸時代になって国外向けにつけられたもので、それ以前は単に「サキ(酒)」や「焼酒」などと呼ばれていたようです。つまり、泡盛は舶来の酒を沖縄風にアレンジした、比較的新しい酒なのです。

Cimg0021_1 沖縄古来の酒「ウンシャク酒」は、その後どうなったのでしょうか。実はこの酒、戦前まで実際につくられ、口噛み酒なども神事などに使われていたそうです。現在ではさすがに口噛み酒はなくなったようですが、沖縄伝統のウンシャク酒は完全に途絶えたわけではありません。この酒は形を変えて現在に受け継がれています。それが栄養飲料ミキです【写真。クリックで拡大】。これは酒ではなく、もちろん口噛みでもありませんが、発酵させる前の米をドロドロの状態にしたものがもとになっているようです。今では黒糖やショウガ、ウコン入りなど様々な種類のミキが販売されています(僕は黒糖入りが好きです)。ウンシャク酒は新たな進化をとげて現代に生き続けているのです。今度ミキを飲むときには、その歴史に思いをはせながらドロドロのドリンクをノドに流し込んでみてはいかがでしょうか。

参考文献:『沖縄県史』22巻、高良倉吉『琉球王国史の課題』

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コメント

今の泡盛はタイ米を原料にしているみたいですが、やっぱり王朝時代は琉球産の米で作っていたんでしょうか?
「粟でも作っていたので”粟盛”と呼ばれるようになった」という説を何かで読んだような記憶もあるんですが・・・・・・。

投稿: 茶太郎 | 2006年6月14日 (水) 22:28

ミキ(神酒)はちゃーんと現代にも残ってますよー。
多良間島の「スツウプナカ」(音声表記のままじゃないけどごめんなさい)などの祭祀では神酒(ミス←これも表記むずかしぃ。)が出てきますよー。もちろんウンシャク酒では無いですけど、米ミキと芋ミキがあって、麹で発酵させてますよ。
味はすっぱくて甘い(特に芋ミキの1週間くらいのものが美味でした。)お酒でしたよ。アルコール度数は低く、日にちが経ってしまうと酸味がキツクなって飲めません。イメージ的には繊維質の多くなった韓国の濁酒「トントンジ」ぽかったです。
また、神に捧げるミキの中にはアルコールがほとんど0%の「しるまし」という米や麦(穂祭りのときに飲むもの)をくだいてつくったドロドロの物も飲んでいたみたいです。
オモロの中にでてくる酒の中には「ぜに」(読み方:ジン)がでてきますけど、とらひこさんの見解では何を指してると思いますか? ちなみに私は「泡盛」だと思っているのですが・・・。

投稿: かなしー | 2006年6月16日 (金) 16:47

>茶太郎さん

王朝時代にはタイ米は使用していなかったようですよ。たしかに民間では粟やイモを使って焼酎が造られていたようです。しかし、泡盛の語源ははっきりしていなかったと思います。

蔡温も泡盛の製造と経済政策についてコメントしてましたね。

投稿: とらひこ | 2006年6月16日 (金) 22:07

>かなしーさん

酒としてのミキが今でもどこかの地域で造られているというのは聞いていましたが、多良間でしたか。アルコール分が低いから密造酒にならないのでしょうかね(汗)「汁まし」はおそらく飲料のミキの系統ですね。僕は一度も飲んだことがないので、今度飲んでみたいです。

オモロでは「ぜに」のほか、「さけ」や「しげち」の語も登場するようです。しかし、「ぜに」が厳密に泡盛なのかは言えないように思います。他の酒を指してる可能性も考えられます。

投稿: とらひこ | 2006年6月16日 (金) 22:15

いつも楽しく拝見していながら、今回初めて書き込みします。
ミキの件なのですが、実は多良間に限らず沖縄島でもウマチー(旧暦5月および6月の分共に)の際にミキを用意する部落(字)は今でも結構あるのですよ。
それこそ那覇近郊でも…(もちろん、那覇内でもあるかもしれませんね)。
製法や分量は部落によってさまざまなのですが(最近では手ずから作らずに業者への発注も有)、基本的に米と砂糖で作られており、日数が経ってもほとんどアルコール発酵せずにただひたすらにすっぱくなるものです。
余談ですが、個人的に興味深いなと思ったのは、ミキに戦後、あるいは早くとも近代に「神酒」という漢字をあてた結果、現在ではミキを「ジンス」などと言っている部落があったことです。

投稿: 通りすがりのフォークロリスト | 2006年6月25日 (日) 01:15

>通りすがりのフォークロリストさん

ご教示ありがとうございます。
僕は民俗関係には疎いので、大変参考になりました。

業者への発注もされている事実も興味深いですね。

投稿: とらひこ | 2006年6月29日 (木) 21:33

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