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2005年8月 7日 (日)

儀間真常の尻ぬぐいを蔡温が

このブログでもたびたび登場している儀間真常(儀間の大屋子もい、まいち)。真常はサツマイモを沖縄で普及させ、そのイモはさらに江戸時代の日本にも伝わって多くの人々を飢饉から救うことになりました。彼はそんな偉大な人物なのですが、彼がなしとげた功績が100年の時を経て思わぬ結果をまねき、その尻ぬぐいを蔡温がするはめになったという事実をご存じでしょうか。

真常はサツマイモを普及させたほかに、琉球の産業振興のためサトウキビの新たな製糖法を導入したことでも有名です。導入以前の琉球にもサトウキビは存在していたようですが、ごく少量でそれを商品化するまでにはいかなったようです。真常は中国(明)の福建からサトウキビを大量にしぼるための新技術を琉球に持ち込みました。みなさんのなかには沖縄観光の際、琉球村などで牛に引かせてサトウキビをしぼるローラー式の圧搾(あっさく)機をご覧になった方がいると思いますが、あれこそが真常が琉球に導入した新型ローラー式機械だったのです(現在の圧搾機は真常が導入したものから若干の改良がされてます)。

ローラー式圧搾機はもともとインドで考案され、16世紀後半に中国福建に伝わって改良をほどこされたもので、サトウキビの圧搾効率を飛躍的に高めた革新的な新技術でした。真常は当時のハイテク機械であったローラー式圧搾機と、それにともなう生産システムを琉球に導入して、黒糖の大量生産を可能にしたわけです。新製糖法の確立によって糖業は近世琉球の財政を支える基幹産業となり、琉球産の砂糖は大坂市場にまで輸出されることとなりました。

ところが、すべてが順調にみえた状況から事態は思わぬ方向へとむかいます。黒糖の原料であるサトウキビ畑を増産するために各地で大規模な土地開発ブームが起こり、また木製ローラーの製作と黒糖を煮詰めるための燃料などを大量に必要とした結果、沖縄での森林伐採が進み、それまでの緑豊かな風景は一変して、木材の枯渇という深刻な事態をまねきました。真常の導入した新製糖法は、琉球史上初の「環境問題」を引き起こしたのです。

この環境問題の解決に取り組んだのが蔡温でした。蔡温は「杣山(そまやま)政策」と呼ばれる森林育成の政策を実施して、やみくもに森林資源を消費するやり方を見直したのです。つまり乱暴に言ってしまえば、真常の尻ぬぐいを蔡温がすることになったというわけです。もちろん環境問題の原因は真常だけにあるわけではなくて、砂糖を増産して外貨を獲得しようとした王府にもあるでしょう。別に真常を責めるつもりはないのですが、良かれと思ってやったことが後に意外な結果をもたらす場合があるということです。われわれが現在していることも時を経てどのような結果をまねくことになるのか…それは歴史の神のみぞ知る、ということでしょうか。

参考文献:沖縄の土木遺産編集委員会編『沖縄の土木遺産』

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コメント

王府ではなくて、琉球の儲けを横取りした薩摩が悪いのでは??

投稿: 琉球いも | 2016年11月21日 (月) 01:07

>琉球いも さん
薩摩は一方的に儲けを収奪したわけではないですよ。
2000年以降に出た琉球史の概説書などを読むと近世琉球の実態がわかるかと思います。

投稿: とらひこ | 2016年11月21日 (月) 10:41

実態がどうだったかを知ったとしても、
薩摩が嫌いです。


投稿: 琉球いも | 2016年11月21日 (月) 21:42

>琉球いも さん
そうですか。まあそれは個人的な感想なのでいいと思いますよ。

僕は沖縄も鹿児島も好きですけどね。

投稿: とらひこ | 2016年11月21日 (月) 21:52

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