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2005年7月 1日 (金)

歴史の闇に葬られた王子

尚寧王といえば、1609年島津軍の侵攻で降伏した悲劇の王として知られています。この尚寧の次の王には佐敷王子朝昌という人物が尚豊という名で即位していますが、もともと尚寧には別の正式な後継者(世子)がいたのをご存じでしょうか。彼の名は「尚煕」。またの名を「中城王子朝長」といい、尚寧のイトコに当たります。

本来、尚寧の次に国王になるはずだった尚煕が、なぜ尚豊にとって代わられたのでしょうか。一番の大きな原因としては島津氏の琉球征服があげられますが、その他の背景には王国の内部対立があったと考えられています。

Photo_8 もともと尚寧は浦添に本拠地を持つ尚家で、首里の本宗家とは別個の家でした。前代の尚永王には子が無く、王の娘婿だった尚寧王が浦添から国王に迎えられたのです。浦添尚家は尚真王の長男(尚維衡)の家系で本来なら王家の直系なはずですが、ある陰謀により廃嫡、浦添に追放されてしまい不遇の時代が続いていました。

本来の直系であるはずの浦添尚家が王の座につき、尚寧は見事、リベンジを果たしたと言えるでしょう。しかし尚寧政権の誕生は、首里尚家グループの中に新参者の浦添尚家グループが乗り込んでいくことを意味していました。尚寧王の時代には家臣の反乱や三司官の失脚などの様々な対立が起こりますが、これらは首里尚家と浦添尚家の対立によるものだったと考えられます。

尚寧には子がいませんでしたが、後継者として尚煕を指名していました。中城王子を名乗ることは次の王位継承者のみに許されたことでした。尚煕はこの中城王子だったのです。

ところが島津氏の琉球征服後、尚寧が死ぬ直前に後継者は首里尚家の尚恭(尚豊の子)に変更されてしまいます。この変更は薩摩が指示・決定したのではなく琉球内部で決定され、それを薩摩が追認する形で行われました。首里尚家グループは親薩摩派となることで勢力を伸ばし、浦添尚家から王位の奪還を図ったのです。征服後も尚寧政権は陰に抵抗を続けていて、薩摩側にとっても琉球での親薩摩政権誕生は望むところでした。

さらに後継者として決定された尚恭は、幼少で政務がとれないことを理由に彼の父である尚豊に変更されました。この変更は首里尚家グループの家臣、読谷山親方(毛鳳朝)が独断で薩摩藩に掛け合い変更させたものでした。尚恭の母は尚寧の弟、具志頭王子の娘でした。つまり尚豊への変更は浦添尚家の息のかかった尚恭を排除することを目的としていたわけです。

尚豊の即位後、後継者にはこの尚恭ではなく首里尚家の尚賢が選ばれました。尚恭が幼少であるとの理由は、あくまで建前だったことがわかります。

こうして尚豊らの首里尚家グループは王府の中枢から浦添尚家の勢力を追い出し、再び王権を奪還することに成功したのです。

参考文献:池宮正治「尚寧王の世子たち」(『首里城研究』3号)、豊見山和行『琉球王国の外交と王権』

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コメント

はじめまして!「歴史と旅」の管理人の「しゃけ」と申します。私は琉球の歴史に興味があり、沖縄にも2度行ったことがあります。しかし、ここで取り上げられている尚寧王の後継問題のことは初めて知り、とても興味深く拝見しました。これからもちょくちょくきたいと思いますので、宜しくお願いします!

投稿: しゃけ | 2005年8月17日 (水) 21:07

しゃけさま

訪問ありがとうございます。サイト拝見しましたが、ずいぶん沖縄の史跡をまわられ、また本も読んでおられるようですね。横須賀は僕も一度だけ行きましたが、三笠は感動しました。東郷ビールお土産に買って帰りました。

沖縄の地元にいないとなかなかわからないことや、入手困難な専門書にしか書いていないことなどを、どんどん紹介していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。

投稿: とらひこ | 2005年8月18日 (木) 22:42

ブログで沖縄の歴史を紹介するっていうアイデアが斬新ですよね!どういったきっかけで「ブログ←これ重要」で沖縄の歴史を紹介しようと思ったんですか?

投稿: しゃけ | 2005年8月21日 (日) 19:41

沖縄の歴史をネットで紹介しようというのは前から考えていたのですが、ホームページ作成が少々面倒ということもあって躊躇していました。最近になって手軽にできるブログが普及してきたので、それを使わせてもらったという経緯です。まあ、とくに狙った意図があったわけではありません。

投稿: とらひこ | 2005年8月22日 (月) 23:33

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