ブログ卒業します
10年前(2005年)の今日、4月11日にこのブログ「目からウロコの琉球・沖縄史」を始めました。
当時はまだ「ブログ」なるものが登場し始めの頃で、インターネットの新しい可能性を開くものと期待されていました(真鍋かをりが「ブログの女王」と呼ばれていた頃です)。
その頃、東京の大学院で研究をしていた僕は沖縄の歴史がほとんど認知されていないことを痛感し、どうにか研究者以外の人たちに沖縄の歴史をわかりやすく伝えることができないかと漠然と考えていました。
伝承や数十年前の水準の一般書は沖縄県内を中心にそこそこありましたが、研究者が出した最新の論文などの成果を解説した書籍は少なく、ましてや当時は沖縄の歴史についてネット検索しても、手作りのホームページで簡単な沖縄の歴史年表や概説がある程度でした。
この試みは大学院での研究とは全く関係なく、研究者としてのキャリアで考えればムダなことです。また時代の先端を行くインターネットと、大昔の歴史をどうやって「混ぜれば」いいのか見当もつきません。華やかな(ように見えた)ネットの片すみでヒッソリとやればいいか、と「ホームページ・ビルダー」を購入して、いろいろと模索していました。
そこに「ブログ」という存在を知ります。こっちのほうが簡単でデザインもキレイだし、何より当時のホットなツールだったので、ここで沖縄の歴史ブログを始めることにしたのです(ホームページ・ビルダーは無駄になりましたが)。タイトルはベタに「琉球・沖縄史の世界」を考えていましたが(笑)、ある時ふと思いついたのが「目からウロコの~」というタイトル。これだ!と決定。
それで始めたのが10年前の今日でした。
試行錯誤の日々でしたが、少しずつ読者を獲得し、話題になっていきました。そして、1年も経たないうちに沖縄の出版社ボーダーインクさんから書籍化のお声がかかります(2006年2月)。当時は匿名でコッソリやってたので本名で単行本を出すのは迷いましたが、同業者から「アホなことしてやがる」と言われてもいいや、と結局「エイヤッ!」と顔バレしてしまいました(笑)
2007年に刊行された『目からウロコの琉球・沖縄史』はそれまでにない沖縄歴史本として結構な話題となり、沖縄県内でベストセラーになってしまいました。そこからはほぼ毎年、本を出し(直近の刊行予定を含めれば13冊になります)、あれよあれよとテレビや雑誌等のメディアにも出させてもらい、完全オマケのつもりでやっていた活動が忙しくなっていきました。ブログは基本的に週1の記事更新を心がけ、10年で記事総数はちょうど500件となりました。
******
歴史研究をやっている立場から「現代」の沖縄の歴史をめぐる状況をみた場合、30年前に先学がまいた種がようやく花を咲かせたように感じます。今や琉球史がエンターテイメントとなり、テレビや雑誌・本・ネット、行政運営や町おこしにも歴史が前面に出てくる時代です。百花繚乱の感があります。琉球史は(少なくとも沖縄県内においては)メジャーな存在となり、10年間でこの流れを作る動きに僕も少しばかり力になれたかと思います。この流れはさらに加速していくことでしょう。
そこで区切りのいい10年で、一定の役割を果たしたこのブログを終えることにしました。もちろんこのまま続けてもいいはずですが、もともと「完全オマケ」で気軽に始めたものをダラダラ続けて、いつの間にか更新が途絶えるより、節目でスッパリ気持ちよく終わりたいなと思いました。
次の僕の課題は「近世・琉球王朝イメージ」ではない新しい沖縄の歴史像をつむぐことです。以前よりずっと気にしていたことなのですが、琉球史の普及は一方で沖縄の歴史=首里城、琉球王朝のイメージを固定化させてしまったような側面があります。でも沖縄の歴史は貝塚時代だって明治時代だって戦後米軍統治時代だって沖縄の歴史で、琉球時代と対等な価値を持っているはず。それがあまり関心を持たれていないように感じます。
そしてもう一つの課題は、上記の課題やこれまでの「目からウロコ~」で紹介した多様な歴史の局面をふくめて、ブログではない別のカタチで多くの人にわかりやすく噛み砕き、さらに裾野を広げることです。
ブログ自体は削除しませんが、記事更新は終了したいと思います。今後のネットでの活動はまだ固まっていませんが、告知などはブログ以外のネットのツール(SNSなど)で新しいカタチにして再スタートできれば。マンガもツイッターやnoteなどで継続しようと思っています。とりあえずツイッターは【こちら】です。
******
長々と書き連ねてきましたが、このブログを続けたことで、そのまま「研究者」でいれば味わえなかった貴重な体験をさせてもらいました。結論は「やってみて良かった(僕にしては出来すぎ)」です。
ブログは終了しますが、本の執筆や講演など歴史の活動は続けていきますので、またよろしくお願いします。
では、10年にわたるブログをここで終わります。長らくのご愛顧、ありがとうございました!